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奥行きは、影だけの話ではない

公開

ダークモードを入れたとき、明るい配色で効いていた影が暗い背景でほとんど消えました。境目が分からなくなり、カードが背景に溶けます。

そのとき初めて、自分が奥行きを影だけで作っていたことに気づきました。手段が1つしかないと、その手段が使えない場面でやり直しになります。

この記事で扱うこと

面を分けるための手段を並べて、それぞれが何で差をつけているか、どこで効かなくなるかを整理します。そのうえで、どういう順番で選べばいいかを決めます。

「切り分ける」と「浮かせる」は別の目的

まずここを混ぜないほうがいいと思いました。見た目は似ていますが、伝えたいことが違います。

やりたいこと 読み手に伝えたいこと 向いている手段
切り分ける ここまでとここからは別の話だ 余白、背景の明度差、罫線
浮かせる これは本文より手前にある一時的なものだ 影、ぼかし、重なり

切り分けたいだけの場所に影を付けると、本文と同じ平面にあるはずのものが浮いて見えます。逆に、閉じれば消えるものを罫線で区切ると、ページの一部として居座って見えます。

手段を並べて、効かない場面を書き出す

使える手段はそれほど多くありません。並べたうえで「どこで効かなくなるか」を一緒に書いておくと、選ぶときに迷わなくなります。

手段 何で差をつけているか 効かなくなる場面
余白 距離 画面が狭く、余白を取る余地がないとき
背景の明度差 面の明るさ 差が小さすぎるとき。ただし配色を問わず成立する
罫線 本数が増えたとき。画面が格子に見える
枠線と角丸 囲い 入れ子にしたとき。内と外の区別が付かなくなる
光の当たり方 暗い配色。背景より暗い影は見えない
半透明とぼかし 前後関係 背景が単色のとき。透けても何も見えない
影だけが、配色を前提にしている

影は「上から光が当たっている」という状況を描いたものです。明るい面に暗い影を落とすから浮いて見えるのであって、面そのものが暗ければ落とす先がありません。

他の手段は配色が変わっても意味を保ちますが、影だけは配色とセットです。ここを分けて考えていなかったのが、今回つまずいた原因でした。

いちばん強いのは余白だった

意外に思われるかもしれませんが、切り分ける力がいちばん強いのは余白です。

近くにあるものは同じ仲間、離れているものは別の仲間、と読み手は勝手に判断します。線も影も無くても、距離だけで境界は伝わります。実際、罫線を引きたくなった場所の多くは、余白を広げるだけで解決しました。

それでも線や面を足したくなるのは、余白が足りていないときです。狭いところに詰め込んだまま境界だけを描こうとすると、線が増えて画面が窮屈になります。順番としては、まず余白を疑うほうが早いと思います。

暗い配色でも残るのは、明度差だった

ダークモードで見直したとき、最後まで機能していたのは背景の明度差でした。

明るい配色では、白い本文の上に少しグレーがかった面を置くと「一段下がった」ように見えます。暗い配色ではこれが逆になり、背景より少し明るい面が「一段上がった」ように見えます。

明るいほうが手前、は暗い配色でも変わらない

明暗を反転させると濃淡の関係も逆になりますが、「明るいほうが手前に見える」という関係だけは変わりません。

だから、明るい配色では「背景より暗い面」で沈め、暗い配色では「背景より明るい面」で浮かせる。同じ考え方のまま、向きだけを入れ替えれば済みます。

影のように配色ごとに作り直す必要がないので、迷ったらここに寄せるのが安全だという結論になりました。

追従するものだけは、別の扱いが要る

ひとつ例外があります。スクロールに追従して画面に貼り付くものです。

このサイトでは、スマートフォンで目次が画面の上に貼り付きます。ここだけは本文の上を通過していくので、切り分けではなく前後関係を示す必要があります。少し透かして背景をぼかす指定を入れているのは、そのためです。

透けて見えることで「下に本文が続いている」と分かり、ぼけていることで「いま読むのはこちらではない」と分かります。この2つはセットにして初めて意味を持ちます。透かすだけだと下の文字と重なって読みにくくなり、ぼかすだけだと下に何があるか分かりません。

透過は、目立たなくするための手段ではない

以前、追従しているあいだだけ目次を薄くする、という案を入れたことがあります。邪魔にならないようにするつもりでした。

結果として、読みにくくなっただけで邪魔さは変わりませんでした。薄くしても場所は取り続けるからです。透過が答えになるのは「下が見えることに意味がある」ときだけで、「目立たせたくない」なら置く場所や大きさのほうを変えるべきでした。

手段を重ねるほど、弱くなる

ここが今回いちばん腑に落ちた部分です。

ひとつの境界に、枠線を引いて、角を丸めて、背景を変えて、影を落とす。全部やれば強く分かれそうに思えますが、実際には逆でした。どの手段が境界を作っているのか分からなくなり、画面全体がぼんやりします。

手段が増えるほど、他の場所との差も付けにくくなります。すべての箱が同じように装飾されていると、本当に浮かせたい1枚だけを浮かせる余地が無くなります。

1つの境界には、1つの手段

決めたのは単純な方針で、ひとつの境界を作るのに使う手段はひとつだけにする、というものです。

面で分けたなら線は引かない。線で分けたなら背景は変えない。そうしておくと、あとから「ここだけ強調したい」と思ったときに、手段をひとつ足すだけで差が付きます。

選ぶ順番を決めておく

毎回考え直さなくて済むように、順番にしました。

まず余白で足りないかを見ます。足りるなら何も足しません。次に、それが同じ平面の話なら背景の明度差で分けます。線を引くのは、面で分けると重くなる細かい区切りだけにします。

手前に浮かせたいときだけを使い、その場合は明るい配色と暗い配色の両方で見え方を確かめます。追従して本文の上を通るものだけ、半透明とぼかしを使います。

この順番にしてから、装飾で迷う時間がはっきり減りました。決めているのは見た目ではなく、何を伝えたいかのほうだからだと思います。

今回の学び

まず、奥行きの手段は、配色に依存するものとしないものに分かれること。影だけが光を前提にしていて、暗い配色では成立しません。手段を1つしか持っていないと、配色を増やした時点でやり直しになります。

次に、いちばん強い区切りは、何も描かない余白だったこと。線を引きたくなったときは、たいてい余白が足りていませんでした。描き足す前に、空けられないかを先に見るほうが早いです。

そして、手段を重ねると強くなるどころか弱くなること。全部の箱を同じように飾ると、本当に目立たせたい1つを目立たせる手段が残りません。1つの境界に1つの手段、と決めておくのは、いま作りやすくするためではなく、あとで差を付ける余地を残しておくためでした。

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